粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

ベンチュリースクラバー

Venturi scrubber

 洗浄集塵装置の一形式である。管の一部を絞り気流を 40 ~ 100 m s-1 の高速に加速後,10˚ 前後の広がり角で元の管径に戻すことによって,圧力損失を回復させる構造は,ベンチュリー管と呼ばれ,流量測定などに使用されている。

 ベンチュリースクラバーとはこの絞られた喉部に洗浄液をガス 1 m3 当たり 0.5 ~ 2 リットル注入する構造の集塵装置である。加速された高速ガス流によって洗浄液は 1 mm 弱の液滴として噴霧される。洗浄液滴は慣性を有しており,含塵気流によって気流と同じ速度に加速されるまで洗浄液滴と含塵気流の間にかなり大きい相対速度を有しているが,気流中の粉塵が洗浄液滴に慣性衝突して捕集される。一般に,慣性衝突はターゲットが小さいほど高効率であり,また気流のターゲットへの相対速度が大きいほど高効率である。洗浄液滴が大きいほどその慣性のため気流との相対速度は大きいが,反面ターゲット径が大きくなることによって衝突が起こりにくくなる。したがって,洗浄液滴には最適な大きさがあり,1 mm 弱の大きさが用いられる。なお洗浄液滴はベンチュリースクラバーの下流に設置されたミストセパレーターによって気流中から回収される。

 本装置はサブミクロンの粉塵まで捕集可能であり,喉部流速を 100 m s-1 以上にすることによって 0.1 µm の粉塵まで捕集可能であり,小型で大量の含塵ガスの処理が可能である。しかし,高流速を使うので圧力損失が 3 ~ 10 kPa と高く,廃水処理の問題もある。したがって,電気集塵装置やバグフィルターのような乾式集塵装置でも処理可能な粉塵については,とって替わられる傾向がある。

 最近,蒸気発電や石炭ガス化複合発電の次の世代の,より発電効率の高い新しい発電方式である,Gud システムと呼ばれる石炭の 1300 ℃ 以上での加圧燃焼方式を用いた複合サイクル発電方式がヨーロッパを中心に開発中である。Gud システムの課題は,高温ガス中の溶融ダストの除去であり,この目的では乾式集塵の適用が困難であるため,高温用ベンチュリースクラバーの開発が行われ注目されている。

→ 洗浄集塵装置ミストエリミネーター

執筆者:粉体工学用語辞典
更新日:2021/9/20

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