粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

フラウンホーファー回折(粒子径測定)

Fraunhofer diffraction (particle size measurement)

 粒子径 $D$ が光の波長 $\lambda$ より十分大きく,不透明な($\alpha = \pi D/\lambda \gg 1$ かつ $\alpha|m-1| \gg 1$ ,ただし $m$は比屈折率で,粒子の複素屈折率と媒体の屈折率の比),球による散乱光強度分布は,前方の小さな散乱角領域に限れば,同一直径 $D$ の円形開口あるいは円盤によるフラウンホーファー回折の散乱光強度分布(回折パターン)で近似でき,次式で表現できる。

$$ I(\theta) = \frac{\alpha^{4}\lambda^{2}I_{0}}{16 \pi^{2}z^{2}}\left[ \frac{2J_{1}(\alpha \sin \theta)}{\alpha \sin \theta} \right]^{2} $$
ここで,$\theta$ は散乱角度,$J_{1}(x)$ は一次の Bessel 関数,$z$ は散乱体と検出器との距離,$I_{0}$ は入射光強度である。この式は粒子の大きさと光の波長のみ関数であるので,散乱強度分布の角度依存性を測定すれば,粒子径が推定できる。

 この前方散乱光強度分布(回折パターン)を測定するためにしばしば,入射光に対して垂直に配置した,入射光軸を中心とする同心円状(または扇形)の光検出器アレイ(光検出素子配列)が用いられる。仮に各光検出素子の面積が半径 $r$ に比例するようにした場合を考えると,各エレメントで受光する光エネルギーは,$I(r)r\varDelta r$ に比例するから,光検出器の単位幅(半径)あたりの光エネルギー密度 $rI(r)$ [W/m] は, $$ rI(r) \sim \alpha ^{3}\frac{2 J_{1} (\alpha r/z)}{\alpha r/z} $$ で与えられる。ただし,$\sin \theta \approx (r/z)$ とした。この場合,中心部では光強度(単位面積あたりのエネルギーフラックス)が大きいのに対して光検出素子の面積が小さくなる。このことによって,位置 $r$ の検出素子での受光量は,原点で $rI(r)|_{r\rightarrow 0}=0$ から始まる明暗パターンを示し, $$ \theta_{\mathrm{p}} = \frac{1.357}{\alpha} $$ に第1ピークを持つ。

 散乱光強度は粒子断面積(直径の2乗)に比例する。これらの関係が粒子径分布測定法の一つであるレーザー回折・散乱法の基礎であり,光学モデルとしてフラウンホーファー回折モデルを適用できる条件では,測定に粒子屈折率の情報を必要としない点で便利である。

→  レーザー回折・散乱法

執筆者:粉体工学用語辞典
編集:松山達(創価大学)
更新日:2021/06/15

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