砂に圧縮力を加えると，片栗粉を握り締めたときと同じように“グッ！グッ！”と断続的な音を出す砂がある。これを鳴き砂という。わが国ではいくつか浜辺にみられ，なかでも兵庫県の網野町（琴引浜），島根県の仁摩町（琴ヶ浜）の海岸が有名である。鳴き砂の主成分はけい砂（SiO₂）で，音を発する条件として，

1. SiO₂ がおよそ 70 ～ 80 % 以上含まれていること，
2. 比較的塊状（blocky）の粒子で，表面が滑らかであること，
3. 表面が清浄で，粒子間摩擦係数が大きいこと，

が必要である。鳴き砂が圧縮力を受けると，砂層内部にいくつかのせん断滑り帯（剪断滑り帯）が形成される。一つの滑り帯が形成されるとき，粒子層は瞬間的に膨張し，滑りが終わると収縮する。多くの滑り帯の発生のたびに，砂層は局所的な膨張と収縮を繰り返すので，砂層表面が振動し，音が発生する。