粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

対数正規分布

log-normal distribution

 粒子径 $x$ の対数 $\ln x$ が正規分布に従うならば,粒子径分布ふるい下積算分布) $Q(x)$ は次式で表わされる。これを対数正規分布という。

\begin{align} Q(x) &= \frac{1}{\sigma_{x} \sqrt{2\pi}}\int_{0}^{x}\exp \left\{ -\frac{(\ln x - \mu_{x})^{2}}{2{\sigma_{x}}^{2}} \right\}\mathrm{d}(\ln x) \\[7px] &= \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma_{x} x}\int_{0}^{x}\exp \left\{ -\frac{(\ln x - \mu_{x})^{2}}{2{\sigma_{x}}^{2}} \right\}\mathrm{d}x \end{align}
ここで,$\sigma_{x}$ は $\ln x$ の標準偏差で,$\mu_{x}$ は $\ln x$ の算術平均値である(それぞれに特定の名称がなく不便である)。したがって,$\sigma_{\mathrm{g}}=\exp \sigma_{x}$ は粒子径 $x$ の幾何標準偏差,$x_{\mathrm{g}}=\exp \mu_{x}$ は粒子径 $x$ の幾何平均径となる。また,$\mu_{x}$ は $Q(x)=0.5$ となる値であるので,$x_{\mathrm{g}}$ は積算分布の 50 % をに対応する粒子径 $x_{50}$(中位径,50 % 径,メディアン径)である(一般にある分布のパーセント点を与える粒子径,たとえば,分布の 25 % に対応する粒子径を $x_{25}$ のように表記して 25 パーセンタイル径と呼ぶ)。
 粒子径 $x$ が対数正規分布に従うとき,$Q(x)$ を $x$ に対して,対数正規確率紙にプロットすると直線になる。個数基準分布質量基準分布といった基準の違う分布同士の $\mu_{x}$ は当然違う値になるが, $\ln x$ の標準偏差 $σ_{x}$ は対数正規分布の性質上,どの基準分布でも同じ値になる。したがって,グラフ上では,各基準分布は平行線となるので換算が簡単である(ハッチの式)。また,正規分布を $z=0 〜(\mu -\sigma)$ で積分すると $Q(z)=0.159$ となり,この性質から,$\sigma_{x}=\ln x_{50}-\ln x_{15.9}$ となるので,$\sigma_{\mathrm{g}}=x_{50}/x_{15.9}$ の式を使って,グラフ上から $\sigma_{\mathrm{g}}$ を求めることができる。

→  粒子径分布ハッチの式, 対数確率線図(付録)

執筆者:粉体工学用語辞典
編集:松山達(創価大学)
更新日:2021/06/09

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