粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

クーロンの法則(摩擦),クーロンの摩擦法則

Coulomb's friction

 2つの物体の間に相対運動を引き起こそうとしたとき,あるいは相対運動が続行しているとき,その物体間の接触面に運動を阻止するように接線方向に力が働くが,それを摩擦力という。静止状態では常に外力と摩擦力が釣り合っている。静止摩擦が絶えられなくなって相対運動がまさに始まろうとする瞬間の静止摩擦力を最大静止摩擦力と呼び,相対運動が継続しているときに働く摩擦力を動摩擦力と呼ぶ。最大静止摩擦力と動摩擦力はそれぞれ,接触面に垂直に働く力(垂直抗力) N に比例し,F = µN で求まる。これが,クーロンの法則(クーロンの摩擦法則)と呼ばれる法則であり,固体間の静止状態又は低速の摩擦で成立する。µ を摩擦係数という。静止摩擦係数は最大静止摩擦力を与え,動摩擦係数よりも大きい。
 物体が転がる場合もクーロンの法則は成り立ち,物体がまさに転がりを開始しようとするときと転がっているときの,(最大)静と動の摩擦係数が存在し,静止摩擦係数のほうが大きい。このとき摩擦係数 µ は,通常垂直力の大きさにも接触面の大小にも,また動摩擦係数の場合,相対運動の速さにもよらない。µ は物体の種類と接触面の状態にのみ依存する。粉体の二つの層の間に摩擦にもクーロンの法則は成り立つが,粉体層の場合,接触面の状態が局所的に変化するので µ も変化し,それを規定するのは難しい問題の一つである。
 固体間低速すべり摩擦についてのこの法則を歴史的にみると,1699 年に G.Amonton がみつけ,1781 年に C.Coulomb が導いている。したがって,アモントン・クーロンの法則(アモントン・クーロンの摩擦法則)と呼ばれることも多く,またそのほうが妥当なようにも思われる。

執筆者:粉体工学用語辞典
更新日:2021/9/12

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